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『Dying for Sex』──死を目前にして“性”を取り戻す、ある女性の選択

「余命わずか」と告げられたその日から、モリーは“性”を通して生き直す。Huluの挑発的な新作『Dying for Sex』(邦題:『人生の最期にシたいコト』)は、病、トラウマ、快楽、そして自己解放を大胆に描く実話ベースのドラマ。あなたは、彼女の選択を笑えるか。それとも、共感するか。

「乳がん再発」は、死の宣告ではなく人生の再起動だった

『Dying for Sex』の主人公モリー(ミシェル・ウィリアムズ)は、乳がんの再発により治療不能の宣告を受けた直後、10年以上連れ添った夫と別れる決断をする。カップルセラピーの最中に届いた診断結果。それは、「患者としてしか見られていない」関係から脱する最後のタイミングだった。治療と並行して、彼女は自らの快楽を取り戻す旅に出る。この物語は、死と向き合う過程ではなく、生を再構築するプロジェクトとして始まる。

※該当シーンの一部映像(YouTube公式)

Hulu Dying for Sex シーン画像 モリー 会話 親友 ニッキ 街角
モリーが親友ニッキに想いを打ち明ける| © FX Productions and Hulu YouTube

セックスは「行為」ではなく、「認識」だった

旅の中でモリーは、自らのセクシュアリティと真正面から向き合っていく。セルフプレジャーや複数のパートナーとの出会いを通じて、初めてのオーガズムを経験する彼女は、やがて「BDSM」(Bondage=拘束、Discipline=規律、Sadism=加虐、Masochism=被虐)という領域に自分の欲望の居場所を見出す。そこは暴力ではなく、同意と信頼に基づく深いコミュニケーションの場であり、身体の衰えを抱えるモリーにとって、むしろ“できない”ことを前提にした快楽のあり方だった。性とは「行為」ではなく、「状態」や「認識」なのだと、このドラマは静かに語る。

死を目前にして、「今この瞬間」を肯定する力

最終章では、ホスピスで過ごす日々のなかで、モリーの心は以前よりも自由に、そして軽やかになっていく。彼女のセックスの探求は、単なる“逸脱”ではなく、「死を目前にしてもなお“進行形の私”を生きる」という、根源的な生の肯定へとつながっていく。『Dying for Sex』は、死を「静かな終わり」としてではなく、「最も鋭敏な感覚の発露」として描くまれに見る作品だ。そして、私たちに問いかける——あなたは、どんなふうに“性”を生き直す?

エピソードは、Huluで視聴できる

WOXES Editorial Team
WOXES Editorial Team

“Entertain the Desire” をテーマに、好奇心とユニークな視点でセンシュアリティを探求。出版・メディア業界での経験をもとに、特集・記事・動画を通じて、セクシャルウェルネス、エンターテインメント、カルチャーの多様な側面と、そこにある感情を発信しています。